賃貸で起きやすい水回りトラブルとは？水が原因の事例や予防法も紹介

水廻りトラブルの主な原因と「水」が関係するポイント

賃貸住宅では、「水漏れ」や「詰まり」といった水が起点となるトラブルが多く発生しています。とくにトイレでは、詰まりやタンクに水が溜まらない、水が床に漏れるなどの相談が多数を占めており、トラブル全体の42%近くを占めています。これは汚物やトイレットペーパーの過剰投入、排水トラップ部分への固形物の蓄積が原因となるケースが多いためです。また、排水トラップの構造的な弱点も影響しています。キッチンでは油や食材カスの蓄積、台所シンク下の水漏れや悪臭も頻出の傾向にあります。これらは水の流れが悪くなることで詰まりや配管の劣化に繋がり、水の動きがトラブルに直結していることが分かります。

以下に、水が関係するトラブルの要因を整理した表を示します。

さらに、排水トラップ（封水）が乾燥・消失すると、悪臭や害虫の侵入を招くリスクがあります。排水トラップの封水は、水によってバリアの役割を果たしているため、長期間使用がないと消失しやすく、水の存在そのものがトラブル防止に不可欠です。

また、排水口の油やゴミによる詰まりは、水の流れが滞ることで起こります。とくに油は冷えて固まりやすく、石鹸カスや食材カスと結びついて排水管内部に固形化し、配管の通水性を阻害します。水が適切に流れないことが詰まりの主要な誘因となっています。

「水」の性質を活かしたトラブル予防策

賃貸物件における水回りトラブルは、その多くが「水」の特性を活用することで未然に防げるものです。ここでは、水を上手に活かした具体的な予防策を3つご紹介いたします。

まず、封水についてですが、排水トラップには水が残ることで悪臭や虫の侵入を防ぐ封水（せんすい）の役割があります。空室中などで水が蒸発すると、この封水が途切れてトラブルの原因になることがありますので、定期的に水を流して封水を維持することが重要です（特に集合住宅では推奨されています）。

次に、水圧や流量を活用した掃除についてです。油やゴミなどは適切な水の勢いによって洗い流されやすくなります。また、重曹＋酢を使うことで軽い詰まりや臭い対策にもなります。これはご家庭でも手軽にできる予防策として効果があります。

最後に、築年数が長い物件では配管の老朽化が進行しやすく、水の使い方によって早く劣化が表れることがあります。そのため、築20年以上の建物では1〜2年に一度程度の高圧洗浄や専門家による給排水設備点検を行うことで、大きなトラブルの前に対応が可能になります。

入居者が自分でできる「水」関係の応急対応法

賃貸物件で水回りにトラブルが発生した際、深夜や早朝など管理会社にすぐ連絡できない場合でも、入居者自身ができる応急対応があります。次にご紹介する方法は、どれも水の関係が鍵となるシンプルかつ実践的な手順です。

まず「ラバーカップによる詰まり解消」は、排水口にゴム部分をしっかり密着させて、ゆっくり押してから勢いよく引きます。洋式トイレ用のラバーカップを使うことで、効果的に水の流れが改善できます。水位が高すぎる場合はバケツで減らし、低すぎる場合は足すなど調整も大切です。作業後は水を流して通りを確認してください 。

次に、「タンク内の水位調整やパッキンの掃除」は、水漏れや水流異常に関係する応急対応です。まず止水栓を回して給水を止め、水が止まったことを確認してからタンクの蓋を開けます。水位が異常に高い・低い場合は調整し、パッキンに汚れがあれば軽く拭き取りましょう。ただし、劣化確認や交換は自己判断せず、管理会社へ相談するのが安全です 。

深夜や早朝などで対応が間に合わないときは、「水の状態をチェックする」だけでも被害の拡大を防ぐ第一歩です。タンクからの異音やポタポタの水漏れ、排水が逆流していないかなどを確認してください。また、火災保険に付帯する24時間駆けつけサービスがあれば、詰まりや水漏れの応急処置を無料対応で行ってくれることもあります 。

以上の応急対応を行う際は、具体的な手順と水の状態に注目しながら、入居者自身の安全と設備の保護を優先して行ってください。

「水回りトラブル」に備えるための水を意識した管理体制

賃貸物件における水回りトラブルを未然に防ぎ、入居者との信頼関係を維持するためには、「水」をキーワードにした管理体制の構築が不可欠です。以下では、入居時から実施すべき対策、定期的なチェックのポイント、緊急時の対応フローにおける「水の状態確認」の重要性について、具体的に解説します。

まず、入居時に封水（排水トラップ内の水）が乾いて悪臭や害虫が発生しないよう、「封水の維持は水を流すことが重要である」ことを説明し、基本知識を共有することが大切です（TARGET: 水）。これにより、入居者の注意喚起と予防意識を高めることができます。また、長期不在時など水が停滞しがちなタイミングに、封水が切れてしまわないよう、たとえば定期巡回や案内訪問時に水を流すなどの「水回りチェック」を盛り込むことが効果的です。不在留守中の封水切れによる臭いや虫の侵入対策として役立ちます。

さらに、トラブル時の緊急対応フローにおいては、「水の状態の確認」を明確に組み込むことが重要です。具体的には、封水が切れていないか、水が逆流していないか、流れが悪くないかといった状態をまず入居者に確認してもらい、そのうえで応急処置（止水栓の操作、写真・動画の取得など）へつなげることで、被害の拡大防止と迅速な対応が可能になります。これらの体制整備により、管理会社としての信頼性を高めるとともに、水回りトラブルの未然防止にもつながります。

まとめ

賃貸物件の水回りトラブルは、日常生活に大きな影響を及ぼしますが、「水」の性質や流れに着目することで多くの予防策が立てられます。封水の維持や排水の流れを意識した日々のケア、またトラブル発生時の応急対応を知っておくだけで、不安や被害を最小限にできます。暮らしを快適に保つためにも、水回りのチェックや正しい知識を身につけて、安心できる住環境を築きましょう。些細な違和感にも目を向けることが重要です。