エレベーターの故障時はどう対応する?管理者向けマニュアルの基本をご紹介
「もしエレベーターが突然止まってしまったら、どう対処すればいいのか不安…」とお感じではありませんか?ビルオーナーや管理者にとって、エレベーターの故障は入居者の安全や信頼に直結する大きな課題です。予期せぬトラブル発生時、混乱せずに対応できる準備は万全でしょうか?この記事では、よくあるエレベーターの故障とその初動対応、万が一の緊急時対応手順、安全装置や点検のポイント、再発防止策までを具体的に解説します。正しい知識を身につけ、安心できるビル管理に役立ててください。
故障の主な原因と初動対応の基本流れ
エレベーターにおいて発生しやすい主な症状には、以下のようなものがあります。
| 症状 | 内容 |
|---|---|
| 動かない | 地震や停電時の自動停止、安全機構による運転休止が影響する場合があります |
| 異音 | メカ部分の摩耗、潤滑不足、部品のガタつきなどが原因として考えられます |
| 扉不具合 | センサー異常やドア機構の故障、制御盤の不具合などが考えられます |
地震発生時は、P波(初期微動)を感知するとエレベーターは最寄り階に自動停止し、扉を開放して利用者の避難を促します。強い揺れ(S波)を感知した場合は運転が休止され、安全確認と技術者による点検が完了するまで再開されません。これは地震時管制運転という安全機能です。
停電時には「停電時自動着床装置」が作動し、バッテリー電源に切り替わって最寄り階までかごを移動させ、扉を開放して乗客を解放します。その後、運転は休止状態となります。
日常点検で管理者自身が確認できる簡単なチェック項目としては、以下のようなものがあります。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 操作盤 | ボタンが正常に反応し、表示ランプに異常がないか |
| 異音・揺れ | 運転中に普段と違う音や振動がないか |
| 照明・インターホン | かご内の照明が点灯し、インターホンが正常に通信できるか |
これらの初期対応を押さえておくことで、故障時にも利用者の安全を確保しつつ、冷静かつ迅速に対応することが可能です。
緊急時の具体的な対応手順
エレベーターに閉じ込められた際は、まず操作盤の非常ボタンを押し、インターホンで外部に連絡するのが最も基本的かつ重要な手順です。非常ボタンを押すと、管理人室や防災センター、エレベーターホールなどへの通報が行われ、かご内には「呼び出し中」などの表示が出ることもありますので、落ち着いて対応してください。また、インターホン音が聞こえづらい場合や聴覚に不安がある方は、かご内を叩くなどして音を出し、外部の方に異常を知らせてください。無理にドアをこじ開けようとするのは非常に危険ですので厳禁です。さらに、エレベーターには換気ファンや通気口が備えられているため、窒息の心配はありませんので、慌てず非常通報がつながるまで待機しましょう。
| 状況 | 対応手順 | ポイント |
|---|---|---|
| 非常ボタンが使用可能 | 非常ボタンを押し、インターホンで通報 | 外部との連絡確保が最優先 |
| 非常ボタンが不通 | インターホンが使えるか確認し、それも不可なら大声や音で知らせる | 無理な脱出は避ける |
| 停電・照明なし | 非常灯や換気設備で待機し、冷静に対応 | 換気があるため息苦しさはない |
停電や災害時にエレベーターが止まった場合でも、非常灯やインターホンは非常用電源(バッテリー)で機能することが多いです。停電時は照明が暗くなる場合がありますが、自動的に非常灯が点灯しますので、慌てずインターホンで指示を仰ぎましょう。電源が復旧した際には、通常通り行先階ボタンを押し、指示に従って行動してください。
状況別の初期行動について、以下のように整理できます:
| 状況 | 初期対応 |
|---|---|
| 地震時 | 全階のボタンを押し、最寄り階で降りる。閉じ込められたら非常ボタン/インターホンで連絡 |
| 停電時 | 非常灯とインターホンで待機し、照明復旧後は再度行先階を選ぶ |
| 火災時 | エレベーターは使用せず、避難指示に従う。閉じ込められたら非常通報を行う |
停電や地震などで非常ボタンが機能しない場合、携帯電話などの代替手段で管理者へ連絡を試みることも重要です。しかし、まずはインターホン等の設備による連絡を優先し、状況が落ち着くまで冷静に行動するよう心がけてください。
安全装置とその働きおよび点検ポイント
エレベーターには、災害時や停電時に利用者の安全を確保するための複数の安全装置が設けられています。主な装置とその働きは以下の通りです。
| 安全装置の種類 | 主な働き | 備考 |
|---|---|---|
| 地震時管制運転装置(P波・S波感知) | P波感知で最寄階に停止・扉開放、本震のS波で運転休止 | 設置義務あり(建築基準法) |
| 停電時自動着床装置 | 停電時にバッテリ運転に切替え、最寄階に移動・扉開放 | バッテリーの定期交換が必要 |
| 停電時低速継続運転装置 | 停電後、約10分間バッテリで低速運転を継続 | 自動着床装置との併用不可 |
これらの装置が正常に機能しているかを確認するための日常点検のチェック項目は以下のとおりです。
- 地震時管制運転装置 → P波・S波感知センサーの反応テスト、警告表示の確認
- 停電時自動着床装置 → バッテリー残量・充電状態、最寄階への移動作動確認
- 停電時低速継続運転装置 → 停電シミュレーションでの低速運転継続時間の確認
さらに、エレベーターには法定点検の義務があり、専門業者による定期的な検査・保守は非常に重要です。たとえば、地震時管制運転装置の設置は建築基準法施行令により新設機に義務付けられており、既存機についても安全性向上の観点から設置が推奨されています。停電時装置のバッテリー交換・動作確認も、定期的なメンテナンスで非常時の有効な作動を維持できます。
以上のような安全装置の理解と、日々の点検および法規に基づく定期保守を徹底することにより、エレベーターの利用者に安心・安全な環境をご提供できます。
故障後の対応と再発防止のための管理体制
エレベーターが故障した際には、まず速やかに管理者や責任部署への報告が必要です。管理の流れとしては、現場のビル管理担当者→専門の保守業者またはメンテナンス会社へ連絡し、故障の状況を詳細に伝えて修理を依頼するのが基本です。現状の正確な把握と迅速な情報共有が、安全かつスムーズな復旧につながります。
再発防止に向けては、日常点検をルーティン化し、点検結果を記録することが有効です。例えば、操作盤の動作記録や異音・振動の有無、照明・非常ボタン・インターホンの確認といった具体的項目を毎回チェックし、記録簿に残すことにより、小さな異常の兆しにも早期対応が可能になります。このような記録の蓄積は、故障傾向の分析や予防措置にも役立ちます。
また、部品の劣化状況やリニューアル時期を判断する基準としては、以下のような目安があります:
| 項目 | 目安 | メリット |
|---|---|---|
| 主要部品の耐用年数 | 20~25年 | 故障リスク減少、安全性向上 |
| 部品供給終了通知 | 供給終了の連絡時 | 故障時の修理不能リスク回避 |
| 故障・不具合頻発 | 頻繁にトラブル発生時 | 信頼性向上、安全性確保 |
例えば、制御盤は15~20年を超えた時点で点検強化し、20年を超えると早めに交換を検討すると安心です。また、主要機器全体のリニューアルは、20~25年を目安とすると長期的な投資効果が期待できます。メーカーから部品供給終了の通知が届いた場合も、故障前に計画的な更新を行うことで、停止リスクを軽減できます。
このような管理体制を構築することで、故障後の対応が迅速になり、再発防止に向けた日常点検の質も向上します。さらに、タイミングを見計らった部品の更新やリニューアルを計画的に実施することで、安心・安全なエレベーター運用を長期的に維持できます。
まとめ
エレベーターの故障は、普段の生活やビルの運営に大きな影響を及ぼします。日常の点検で異常を早期に発見し、トラブル時には冷静に対応手順を守ることが安全確保の第一歩です。また、安全装置の役割や点検ポイントを理解し、定期的な法定点検やメンテナンスを徹底することが再発防止につながります。故障後の迅速な連絡や報告体制の整備、日々の点検記録の積み重ねが、安心してエレベーターを利用できる環境をつくります。大切なのは「備え」と「実践」です。